まさと歯科医院

2026.03.20

歯科医師の使命65

 3月8日(日)に令和7年度日本補綴歯科学会の第4回補綴歯科専門医研修会を受講しました。もちろん最近はWEBでの受講が主流ですので、自宅のPCで行いました。毎度のことながら補綴歯科専門医は5年に一度の更新制ですので、その間一定回数、単位の学会出席や研修会の受講が必須となっています。

 今回の口演は鶴見大学の新保秀仁先生と九州歯科大学の槙原絵里先生でした。口演内容はどちらも総義歯に関するもので、取り外しの総入れ歯の形をどうすればよいかというお話でした。これは失われた歯の代わりに人口の歯を入れて治す「補綴歯科学」というジャンルでは最も難しい命題ではないかと思います。1本でも歯が残っていれば、人工的に入れる歯はそれに合わせて色、形、大きさ、かみ合わせの参考にすることができます。もしかしてミリやミクロン単位でそろえて作ることもできます。しかし総入れ歯を作るとき、口の中には何も正確な基準が残っておらず、一切の歯の色、大きさ、かみ合わせなどは歯科医師の理論的な判断や経験にゆだねられます。もっと困難さを際立たせるのは、歯だけではなく顎も失われた患者さんに対し歯と同時に補綴する義歯床と呼ばれる、いわゆるピンク色の土台の形です。これがきちんとした形でないと、入れ歯が簡単に外れてきたり、入れ歯が載っている顎が痛くなり使えなくなってしまいます。歯が全くなくなるとこのあごの形には基準やまねる要素はほとんど残っておらず、歯科医師の判断に任せられることになります。しかし今回の口演では、比較的患者さんの口の動きを利用してその義歯の形を決めてゆくという、患者さん主導の方法で大いに参考にできそうな内容でした。

 補綴歯科学は50年前と比べ、著しい進歩を遂げ、金属を溶かして銀歯を作る時代から、金属を一切使わずジルコニアやオールセラミックスを使いパソコンが天然の歯と間違えるような歯を作ってくれる時代へと様変わりしています。取り外しの入れ歯も技工士さんが手作業で作るのではなく、3Dプリンターが作ってくれる時代へと進化しています。そんな時代になってもいまだにこのようなアナログ的な義歯を作る方法を議論していることに、総義歯の難しさはもちろん、人の体であることと通り一遍ではなく患者さんごとに個別の対応が必要だという難しさを感じた日曜日でした。

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